プロトピック情報局:アトピーのメカニズム1:皮膚と免疫反応

アトピーの肌の皮膚バリア異常と免疫反応

西岡清著:新しいアトピー治療―誤った治療に振り回されないために (ブルーバックス) を参考に記載。

■皮膚バリアの異常

正常な皮膚には、水分保有能力が高い「セラミド」という脂質が多く、それが皮膚の水分を保っています。

皮膚に軽い刺激などが繰り返し加わると、その刺激により皮膚に持続して炎症反応が起こる結果、セラミドに代わって「スフィンゴシルフォスフォリルコリン」という脂質が皮膚に増えると考えられています。

このスフィンゴシルフォスフォリルコリンという脂質は、水分保有能力が低いため、スフィンゴシルフォスフォリルコリンが多い皮膚の角層は固くなります。皮膚は簡単な刺激で傷がつくようになるため、皮膚のバリアの機能が低下します。

リアが損なわれた状態の皮膚からはアレルゲンとなるような分子量の大きい物質が侵入してくるようになります。アレルゲンとなる物質が侵入してくると、その物質は「ランゲルハンス 細胞」と呼ばれる細胞に捕らえられます。アレルゲンとなる物質を捕らえたランゲルハンス細胞は、リンパ球のヘルパーTリンパ球(Th)と呼ばれる種類に対 してその情報を伝達します。

■Th1リンパ球とTh2リンパ球

ヘルパーTリンパ球は、Th1リンパ球と、Th2リンパ球に区別されます。これはリンパ球が作り出す「サイトカイン」と呼ばれる物質の種類で区別されています。
・Th1リンパ球 -> IL(インターロイキン)-2,IFN(インターフェロン)-γを産出
・Th2リンパ球 -> IL-4, IL-10を産出

IL-4,10や、IFN-γといった物質がサイトカインと呼ばれる物質です。

 Th1,2 リンパ球に限らず、表皮の角化細胞や炎症細胞では様々なサイトカインが産出されていますが、IL-2や、IFN-γが多い環境をTh1環境、IL-4や IL-10が多い環境をTh2環境と呼びます。通常の肌はTh1環境になっているのですが、繰り返し刺激を与え続けることで、アトピー患者の方々の皮膚は Th2環境になると考えられています。
■皮膚の免疫反応
では、Th2環境になっていると、どのような反応が起きるのでしょうか。

ランゲルハンス細胞がアレルゲンを捕らえたとき、Th1環境の時はTh1リンパ球に、Th2環境の時にはTh2リンパ球に刺激が与えられます。アトピー患 者の場合、つまりTh2環境の場合、Th2リンパ球が刺激され、IL-4の産出が促されます。またこのときTh2リンパ球はIgE抗体を産出します。 IgE抗体は「肥満細胞」と呼ばれる細胞上の受容体に捕らえられ、その結果、肥満細胞はヒスタミンという物質を産出します。ヒスタミンは血管を拡張し、血 管から血漿成分を透過しやすくします。透過した血漿成分が周りの皮膚組織に浸透し、腫れとかゆみを生じさせます。さらに肥満細胞はまた別のサイトカインを 産出します。このサイトカインはさらに炎症反応を引き起こし、好酸球とよぶ白血球の一種を集め、湿疹の症状を生じさせます。

つまり
繰り返しの皮膚刺激->肌の保湿能力の低下と肌のTh2環境化->アレルゲンの侵入->ランゲルハンス細胞の補足->Th2リンパ球への伝達->IgE抗体産出->肥満細胞補足->ヒスタミン放出->好酸球・サイトカインの凝集->湿疹
という関係になっています。
アトピーの快癒には、この関係を断ち切る事が必要なのがおわかりいただけると思います。